殺劫(シャーチェ)チベットの文化大革命

殺 劫(シャーチェ) チベットの文化大革命
ツェリン・オーセル著
ツェリン・ドルジェ写真
藤野彰/劉燕子訳
A5判並製 412頁
定価 4830円
ISBN 978-4-904213-07-0 C0022
10月中旬出版予定
チベット「封印された記憶」の真実——。
1966年から10年間、チベット高原を吹き荒れた文化大革命の嵐は、仏教王国チベットの伝統文化と信仰生活を完膚なきまでに叩き壊した。現在も続くチベット民族の抵抗は、この史上まれな暴挙が刻印した悲痛な記憶と底流でつながっている。長らく秘められていた「赤いチベット」の真実が、いま本書によって40余年ぶりに甦る。
本書は、チベットにおけるプロレタリア文化大革命(一九六六〜七六年)の写真・証言集である。原著は、北京在住のチベット人女性作家、ツェリン・オーセル(次仁唯色)氏が、父親のツェリン・ドルジェ(澤仁多吉)氏の撮影した写真を基に執筆・編集したもので、本文は写真解説や関係者へのインタビューで構成されている。
原著の題名「殺劫(シャーチエ)」の「劫」については、「奪う」、「脅す」、「長い時間」などの意味があり、梵語では「劫波(劫簸)=kalpa」の略とされ、仏教語では「万劫不復(永遠に回復できない)」や「劫数 (厄運、避けられない運命)」という熟語がある。また、中国語には「劫灰(チエホイ)」という言葉があり、大きな災難の名残を指す。例えば、唐詩の中に「劫灰飛尽古今平(飛び尽くして平らかなり)」(李賀「秦王飲酒」)という詩句があるが、全世界を焼き尽くした劫火の後に灰が飛び散り、何事もないかのように平和な日々が続いているといった意味である。(訳者記)
オーセルさんの不屈の姿勢に対する共感——。
周知のように、中国における言論統制は相変わらず厳しい。しかし、困難な政治環境にもめげず、ペンの力を信じて中国社会の様々な矛盾や不正と戦っている多くの知識人がいることを、私は長年の現地取材体験を通じてよく知っている。オーセルさんは疑いなく、そうした勇気と良識を備えた知識人の一人である。ジャーナリストもペンの力だけが頼りだ。オーセルさんの不屈の姿勢に対する共感こそが、何にも増して『殺劫』翻訳の推進力となったことを最後に記しておきたい。 (訳者あとがきより)





